【レビュー】カフネ

小説

本の概要

カフネとは、愛する人の髪の毛をすくことを意味する言葉。

あなたにとって、自然とそうしてしまう人はいますか?

作者阿部暁子
出版社講談社

百合度:3.5

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あらすじ

一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい。

やさしくも、せつない。この物語は、心にそっと寄り添ってくれる。

最愛の弟が急死した。29歳の誕生日を祝ったばかりだった。姉の野宮薫子は遺志に従い弟の元恋人・小野寺せつなと会うことになる。無愛想なせつなに憤る薫子だったが、疲労がたたりその場で倒れてしまう。

実は離婚をきっかけに荒んだ生活を送っていた薫子。家まで送り届けてくれたせつなに振る舞われたのは、それまでの彼女の態度からは想像もしなかったような優しい手料理だった。久しぶりの温かな食事に身体がほぐれていく。そんな薫子にせつなは家事代行サービス会社『カフネ』の仕事を手伝わないかと提案する。

食べることは生きること。二人の「家事代行」が出会う人びとの暮らしを整え、そして心を救っていく。――

Amazonから引用

レビュー

妙にリアルな家事代行を求める人たちの心境

片親がいない子ども、セルフネグレクト。様々な理由で心身ともに疲れ果てた人たちは、自分の身の回りのことすらできなくなってしまいます。部屋は散らかり放題、まともな食事も取れない状況に。

やるべきことが山積みになると、それを片付けることさえ億劫になって、さらに溜まってしまう。この負のスパイラルから抜け出す方法の一つが「カフネ」という家事代行サービスです。

紹介を受けた人なら1回無料で利用でき、一般的な家事代行よりもハードルがぐっと下がります。「家事を人にやってもらうなんて甘え」「恥ずかしい」と思っている人にこそ使ってほしい、そんな想いから生まれたサービスです。一度、部屋をきれいにするだけ、温かい手作り料理を食べるだけでも、心はとても軽くなります。

また、利用者の心境や、部屋の状況が詳細に描写されるのですが、それがとてもリアルです。実際に同じ悩みを持っている人が多いのだろうなと、胸が締め付けられ、ため息が出ます。

せつなと薫子、最悪な印象からはじまる関係

物語は、ある男性の死をきっかけに動き出します。

亡くなった男性の姉・薫子と、弟の元恋人・せつなが、遺産の件で久しぶりに顔を合わせることになります。ところが、せつなは、約束の時間に遅刻してきた上に謝る素振りもなし。遺産についても「もう関係ないから」と遺産の受け取りを冷たく拒否します。

そんな様子なので、2人はお互い最悪の印象から始まります。

最初は面と向かって嫌味を言うような、バチバチの関係性でしたが、だんだんせつなの態度が「強がりで一匹狼な猫みたい」だと薫子が気づいてから、関係が変わっていきます。

表面上は口が悪くても、心の底では信頼しあう、良きコンビ。強がるせつなと、それを見守る薫子。
ただし、せつなも単純に強がっているだけでなく、芯の通った一面もあり、その姿に薫子はさらに魅了されていきます。

知っているようで知らない

せつなと薫子はきちんと接するようになって一ヶ月、カフネのお客さんとは数時間ほどしか関わりません。その短い時間で、その人がどんな人かある程度は推測できる一方で、それがその人の全てではないんですよね。今見ている状況と、過去や未来の姿は異なるかもしれない。

確定・不確定要素がある中で、せつな・薫子、カフネのメンバはどう寄り添っていくのか。今だけでなく、未来をどう支援していくのか。悩みながら行動する姿が描かれていきます。