概要
この記事は「雨夜の月」第1巻のレビューです。
オススメポイント!
・聴覚障害を抱える女子高生と、彼女に恋した女子高生の2人の話
・言葉1つ1つが心に刺さり、考えさせられる
・キャラクターの表情が豊かで、かわいい
本の概要
| 作者 | くずしろ先生 |
| 出版社 | 講談社 |
| 最新巻 | 8巻 |
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あらすじ
2人の少女の、目には見えないもの、かけがえのないこと。
金田一咲希は高校入学直前のある日、
ピアノレッスンに向かう途中で
見知らぬ同世代の少女とぶつかり手を擦りむくが、
相手から無言のまま真っすぐに見つめられた後、
落とした楽譜を丁寧に拾われ絆創膏をもらう。
咲希は印象的だったその少女とクラスメイトとして再会し、
名前が及川奏音、そして耳が不自由だと知る。
学校では障害を理由に周囲と距離を置く奏音に、
淋しさを覚えた咲希はどうにか分かり合おうとし、
そんな彼女の姿に奏音の態度も次第に変わっていき…。
Amazon紹介文より引用
レビュー
見えない社会の壁
本のタイトル「雨夜の月」は、現実に存在するけど、実際には見ることができないものをたとえた言葉。
健聴者である人には見えない壁でも、聴覚障害者には確かにある社会の壁が作中で描かれています。学校という社会の縮図のような空間で、過去から今に至るまで奏音は様々な壁にあいます。健聴者側の悪意ある壁もあれば、善意でやっているつもりがズレている壁、奏音自身が作った壁という分厚い壁が立ちはだかります。
続巻で、このような障壁を壁ではなく、ハードルとたとえています。それに対し咲希がどう接したかの表現が書かれてあるシーンがあるのですが、それがとても素敵です。
聴覚障害者に対する偏見
クラスの同級生や担任の先生の話の中で、健聴者が自然と認識していることが誤りであることに気付かされます。特に聴覚障害者 = 手話でコミュニケーションは私自身も思い込んでしまっていたものです。聴覚障害者の中でも手話ができる人は2割程度であり、残り8割は筆談や奏音のような唇の動きを読み取るものなどがあるそうです。
また、聴覚障害というと、音が何1つ聞こえないことを想像していましたが、モザイクのように音がするのは分かるけど、何を言ってるのかまでは聞き取れないことがある方、静かな場所では健聴者同様に会話できる方もいます。
私が小学校にいたときに講演してくださった耳が不自由な方は、幼少期のころに聞こえなくなったため、口の動きからは読み取るのが難しかったり、発話も難しいとおっしゃっていました。聴覚障害者の中でも聞こえ方、聞き取り方、コミュニケーション方法は千差万別。聴覚障害者という1つの括りに収めず、一人ひとりに適したコミュニケーションをするべきと教えてくれた気がします。健聴者でも同じことを言えますよね。
相手の気持ちを完全にわかることはできない
「常に相手の立場になって考えましょう」 アレを守れてる人ってこの世にいるのかな
自分の境遇を分かってもらえず、寄り添ってくれる人がいないことに対して、奏音が諦めたような口調で発したセリフ。小学校のときから、他人との違いにさらされ、自分と健聴者は分かり合えないと咲希を拒絶します。
ここから察するに、過去に咲希のように関わってくれる人がいたけど、それに対してトラウマがあったことも窺えます。
強く拒まれた咲希ですが、めげずに奏音と接します。聴覚障害者だから助けてあげようと救いの手を差し伸べるような気持ちではなく、奏音という1人の人間と仲良くしたいために。
玄関前で雨を待つ奏音に対し、傘を差し出すシーン。困ってるときは言ってほしいという咲希に「どうせ言ってもわからない」と拒否する奏音に対し、咲希は食い下がります。
だけど話もしないうちから「言ってもわからないでしょ」と切り捨てられるのは悲しいよ
それは誰だってそうじゃない?
聴覚障害者と健聴者、分かり合えない2種類の人間と分断していた奏音に対して、咲希は突き放されるのは誰だって悲しいと訴えました。分かり合えないこともあれば、分かり合えることもある。多数派、少数派である前に同じ人間として、理解してもらえるように伝えたのが奏音に響いたと思います。そして分かってもらえないことを諦めるのではなく、分かろうとしてくれる人もいるんだよと暗に示しています。
マイノリティ・マジョリティ
聴覚障害者と、立場や視点によって、自分がマジョリティ(多数派)なのかマイノリティ(少数派)なのか当然変わります。1巻は奏音にフォーカスが当たりますが、同性愛者である咲希も世間ではマイノリティです。奏音と咲希が手話を学んでいるシーンで、奏音は咲希に対し、男を表す親指と、女を表す小指を合わせることが「結婚」であると説明します。奏音は異性愛者であり、さも当たり前のように口にしますが、咲希にとっては小指同士が結婚でないことに気分が悪くなります。
少数派、多数派は、注目している議題に対して、それぞれ変わります。とある観点では少数派でも、別の視点では多数派に回る。健常者と障害者、右利きと左利き、異性愛者と同性愛者、(日本における)日本人と外国人など。もっと細かい話題にすれば、おそらくほとんどの人が自分が少数派である考えや属性を持っているケースに遭遇したことがあると思います。1つの属性を観て、自分は社会的にマイノリティだ、私たちの気持ちを考えろと相手を強要せず、自分も別の視点では多数派であり、無意識的に少数派に対し壁を作っているかもしれないことを自覚し、お互いに分かり合えるよう努力していけたらいいなと思います。
みんなかわいい
急に語彙力が下がりましたが、くずしろ先生のキャラはみんなかわいいです!!
特に私は少しデフォルメになったキャラの表情が豊かでとても好きです。ストーリーは重めで暗めな描写がある一方で、間に挟む日常会話やその中で咲希が照れるシーンはかわいい姿がたくさん見れます!パンダかわいい…って呟いている咲希も好きです。
くずしろ先生の他作品「笑顔のたえない職場です。」はLINEスタンプもあるので、かわいいと思った方はぜひ買いましょう!
https://store.line.me/stickershop/product/28953662/ja
(雨夜の月のスタンプもお待ちしております…)
まとめ
アニメ化も予定されている雨夜の月。
このサイトで百合漫画として紹介している一方、マイノリティに焦点を当てた作品であり、その側面も触れずにはいられません。言葉の1つ1つが重く的を得ていて、人によっては痛い言葉かもしれませんが、多くの人に刺さると思い、観てほしい作品です。

