【レビュー】みんな蛍を殺したかった

小説

自分を殺したくなった。でも、そんな自分を作り上げた他者を殺したくなった。

読んでいて、大きなため息が幾度となく出てきた。甘いケーキをお供にしなければ、辛すぎる。目が熱くてかゆい。これは花粉症のせい。

本の概要

作者木爾チレン先生
出版社二見書房

百合度:2.5
甘さ度:0.0

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レビュー

3人のオタク女子のグループに、一人の容姿端麗な転校生「蛍」が加わる。生き物が好きで自分もオタクだからといい、生物部に入部する。オタクたちは、自身と見た目が違いすぎる蛍に、なにか裏があるのではないかと疑念を抱くが、「見た目で区別するな」と自分たちも偏見の目を持っていることに注意させられる。

風貌だけでなく、オタクと積極的に関わってくれる蛍に対して、普段虐げられている彼女たちは心を開いていく。その一方で、時折見せる暗い表情や仕草に違和感を覚える。最終的に、オタクたちが優しかった蛍を殺したくなってくる心理描写は、何も他人事ではないのだ。

オタクも蛍も、周囲の環境、特に家族のバックボーンが悲惨で、その描写は心をえぐられる。ため息ばかり出る。最初は見た目を醜くした神様、ぞんざいに扱う家族に嫌気が差すが、そののち外見だけでなく心も汚れていることに気づき、自分が嫌になる。でもやはり、その状況を作った周りが許せなくなる。自分以外の不幸じゃない奴らが気に食わない。羨ましいのだ。

最初は仲睦ましかったり、途中で好転したと思っても、そうは問屋が卸さない。見た目も心も腐った人間に不幸の雨はやまないのだ。胃がキリキリする。甘いお菓子が欲しくなる。

ミステリとしても面白かった。1部と2部で構成されており、3人のオタク視点で描写された1部で、先ほど述べた違和感を、2部の蛍目線で回収される感じが心地よい。…はずだが、知りたくなかったことを知ってしまったので、憂鬱とした気分も混在し、複雑な感情に陥る。

最後の書評にもあるが、この話は著者のチレンさんの実体験がベースになっているという。読後感は決して良いものではなく、なかなか胸に来るものがあり、このわだかまりを言葉にするほどの語彙や考えが足りてないのは大変申し訳ない。代わりと言っては何だが、チレン先生の他の作品も読もうと思う。

あらすじ

――みんな誰かを殺したいほど羨ましい。

美しい少女・蛍が線路に身を投じる。儚く散った彼女の死は後悔と悲劇を生み出していく――

京都の底辺高校と呼ばれる女子校に通うオタク女子三人、校内でもスクールカースト底辺の扱いを受けてきた。そんなある日、東京から息を呑むほど美しい少女・蛍が転校してきた。

生物部とは名ばかりのオタク部に三人は集まり、それぞれの趣味に没頭していると、蛍が入部希望と現れ「私もね、オタクなの」と告白する。

次第に友人として絆を深める四人だったが、ある日、蛍が線路に飛び込んで死んでしまう。

真相がわからぬまま、やがて年月が経ち、蛍が遺した悲劇の歪みが残された者たちを絡めとっていく――

Amazonから引用